2012/03/07
青壮年や小児なら、まず考えるのは、インフルエンザとマイコプラズマ感染
両感染症には、特効薬があるから、診断する意義は大きい
診断キットだってあるから、診断もしやすい
それ以外の病原体、主としてウイルスによる上気道感染、すなわち、いわゆる 「風邪」 も多い
人の多い所にはあまり出かけない高齢者にとって、ウイルスを拾う可能性は低い
細菌性肺炎
「肺炎は咳が出る」 などと誤解していないだろうか?
肺炎の初期には、咳が出ないで熱だけが出る
だから、37.5℃程度の熱発でも、 「風邪だろう」 と考えるのは危険だ
高齢者は免疫担当細胞の力不足から、たとえ重症であっても、発熱の程度は大きくない
高熱が出ないから重症化する
高熱が出ないから、異変に気づきにくい
一般に重症化することが多く、治療開始が遅れると、生死にかかわる
これは、病院を受診してから肺炎の診断がついて抗生物質が投与されるまでの時間に関する用語である
ホスピタルラグは 4時間が限度とされる
すなわち、 4時間以内に抗生剤が投与される群のほうが、そうでない群よりも治癒までの期間が短く、予後が良いのである
など、その病院の構造的な問題と、担当医師の意識による所が大きい
第1回目の抗生剤投与は、外来で済ませてしてしまうのが理想だ
高齢になればなるほど、がんで死ぬ人は減り、代わりに、死因の多くを、肺炎が占める
僕は医学生のころ、 「肺炎で死ぬ」 という意味がわからなかった
僕の頭の中では、 「肺炎は感染症であるから、適切な抗生物質を使えば治る疾患」 のはずだった
入院患者に 80歳を超える人は少なかった
70歳代くらいまでに、心臓疾患、脳卒中で亡くなる人が多かったのである
だから、高齢者の肺炎を診る機会は、今より遥かに少なかった
今では、心筋梗塞や脳卒中でも救命される
したがって、 80歳以上の高齢者はいくらでもいて、 100歳以上の人だって稀ではない
超高齢者の死因の中で、肺炎が多くを占めることを
そして、その肺炎の原因の多くが 「誤嚥」 であることを
すると、肺は荒廃して呼吸不全も起こしやすくなり、体力も弱り、やがて、肺炎という侵襲に耐えられなくなる
しかし、僕はそれを無視して、簡単に二つに分ける
「誤嚥性肺炎」 と 「そうでない肺炎」
後者は、高齢者でない人がかかる、普通の肺炎
簡単明瞭だ
かくしゃくとしている人は、肺炎にかからない
ところが、過去に脳卒中を患ったり、寝たきり状態の人は、誤嚥性肺炎にかかりやすい
「不顕性誤嚥」 って何のこと?
睡眠中であっても、我々は、無意識にこれを胃の中へ飲み込む
しかし、高齢者、特に脳卒中経験者などでは、唾液の一部が気道に流れ込むことが多い
これが 「不顕性誤嚥」
運が悪いと、唾液と共に吸い込んだ細菌が、肺の中で増殖して、肺炎となる
「誤嚥性肺炎」 である
「肺炎は、夜作られる」
しかし、むせて、食物を肺の奥深くに 「誤嚥」 することは、あまりない
異物が気道に入れば、咳反射が起きて、異物を咳と共に外へ出すからだ
むせているうちは、まだましなのだ
一見上手に食事を嚥下しているかに見える人の中に、肺炎リスクの高い人がいる
むせないから、異物が肺に入り込む
それは、睡眠前の歯磨き
歯のない人は、市販の口腔洗浄液などでのうがい
寝る前に雑菌の総数を減らしておくのだ
たったこれだけのことで、誤嚥性肺炎のリスクは確実に減る
ずばり、唐辛子 (辛味成分カプサイシン) と ACE阻害薬 (降圧薬の一種)
これらは脳内のサブスタンスPという物質を増加させる
誤嚥は、脳血管障害などによるサブスタンスPの減少で起きることがわかっているから、理にかなった話だ
東北大大学医学部が山田養蜂場と共同で行った、老人保健施設でおこなったカプサイシン含有食品の長期摂取研究で、嚥下反射がほぼ正常になったとの結果を発表したのは 2010年のことだ
高齢になるほど激辛ラーメンや、激辛タイ料理を食べるべきなのだ
辛いもの好きに肺炎はいない かも
もちろん、痔のある方は、治してからにして下さい
65歳を超えたら 「肺炎球菌ワクチン」 の接種を受けよう
これだけで、肺炎になりにくく、例え肺炎になったとしても軽く済むようになる
肺炎球菌ワクチンは、ほとんどの医療機関で受けることができる