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No.135 長く続く咳

2012/03/26

喫煙もしないのに、 1ヶ月以上続く咳には種々の疾患が含まれる

しかし、一般内科では、次の 6疾患がその大半を占める

  1. 咳喘息
  2. アトピー咳
  3. マイコプラズマ気管支炎
  4. クラミジア気管支炎
  5. 肺結核
  6. 百日咳

どれも、ほとんど空咳 (痰を伴わない) であるから、鑑別は難しい

肺結核を除いて、胸部X線写真では、特段の異常所見がない
したがって、 「風邪が長引いているのでしょう」 などと誤診され、咳止め薬を長期間処方されている例もある

1. の咳喘息と、2. のアトピー咳は、比較的新しい概念の疾患である

両者とも、症状は酷似していて、ステロイド吸入療法が著効するところまで同じである
ただ、アトピー咳は、やがてステロイド吸入を中止できるのに対して、咳喘息はステロイド吸入の中止をすると、再発することが多い

咳喘息は、気管支喘息の前段階であり

無治療で放置すれば、本物の喘息に移行する
しかし、あくまで 「前段階」 に過ぎないので、喘息特有の音 (喘鳴) は聞こえない

僕の担当する咳喘息の患者さんは

ステロイド吸入を続けてくれているので、一人として、気管支喘息に移行した人はいない

3. のマイコプラズマ感染や、4. のクラミジア・ニューモニエ感染

先行する気道感染症状があるが、これは 「風邪」 と全く区別がつかない
しかし、この病歴を聞けば、ある程度推測できる
また、血中の抗体価を測定することによっても推測可能である

5. の肺結核は

かつて 「国民病」 と言われた時期よりは、その数は格段に減少した
しかし、今でも若者、高齢者問わず、一定の割合で発症している
芸能界では、ハリセンボンの箕輪はるかや、JOYが罹患したことは、記憶に新しい
そして、毎年 2千人余りが結核で死亡している

わが国は、先進諸国の中で

最も肺結核の多い国の一つであり、その意味では、日本は、まだ 「先進国」 とは言えない

結核は、他人から感染し、発病するのだが

感染から発病までの期間は異例に長く、感染をしていても、一生、発病しない場合も多い

また、感染機会があってから、ずーっと後

そう、忘れた頃に発病することだってある
結核患者に濃厚に接していた人は 「接触者健診」 という、定期的な健診を義務付けられるが、この期間は 2年である
しかし、感染していれば、 2年を過ぎた後でも、肺結核が発病する場合も当然ありうる

すなわち、感染状態にある人が

高齢化によって免疫力が低下したり、何かの病気で、免疫抑制作用のある薬剤を使う時などは、結核の発症に気を配らなくてはならないということだ
なお、結核に感染しているか否かは、クオンティフェロンという血液検査でわかる

しばしば

「若い先生は、肺結核を見慣れていないから、見逃す」
と、さも得意げに 「経験豊かな先生」 が述べている文章を見ることがある

しかし、若い先生を見くびってはならない

彼らだって、肺結核の重要さを認識しているので、めったに見逃すことはない
彼らは、 「肺野の陰影を見たら、先ず、第一に結核を否定しろ」 と教えられている
「肺結核は、どんな画像をも取りうる」 ことだって知っている
むしろ、 「経験豊か」 な (医師経験年数の長い) 、呼吸器内科以外の先生の方が、大丈夫か?
と思うことが多い (そういう例を、いくつか見てきた)

単純X線写真ではよくわからない場合、CTという手段がある

CTは、心臓の裏側の、単純X線写真では見えない、ごく小さな病変も明瞭に写し出す

最後
6. の百日咳の特徴は

「連続して出る咳のため、息を吸う暇もない」

さて、最近、幼少時にワクチンを接種しているのにもかかわらず

百日咳を発症する大人が多い
ワクチンで出来た抗体が、年月とともに減ってしまうからだろう

百日咳は、発症時に適切な抗生物質により治療すれば

咳が長引くことなく治癒する
しかし、発症時には、例の特徴的な咳はなく、ごく普通の風邪症状しか呈さないため、いくら名医でも気づくことはない
だから、治療の好機を逃してしまうことが大部分だ

咳が長引くと言って病院を訪れても

その時は既に抗生物質が効かない時期である
百日咳抗体を測定すれば、その咳が百日咳か否かはわかるけれど、もう、どうしようもない
百日我慢すれば咳は止まる

もしも、風邪症状で受診した時に

百日咳とわからずに 「ええい、抗生剤でも出しとくか」 と処方した抗生剤が、たまたま百日咳の特効薬であったような場合はラッキーである
普通、風邪に抗生剤は使わないが、 「怪我の功名」 とはこのことだ

あっ
それと、肺癌は、早期のうちは咳が出ないことに注意

慢性の咳が出るようになると、特殊な場合を除いて、まず進行癌である

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