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No.146 医者とパイロット

2012/04/24

「病院は航空会社のようなものだから」

と、ある病院関係者が言った
これは、病院運営上の話である
僕は、その表現の的確さ、新鮮さに惹かれた

パイロット (医者) がいなければ、航空会社 (病院) は成り立たない

医者は、パイロットと同様、患者という乗客を安全に目的地 (健常な状態) に届けるのが役目である

航空会社を運営するには

パイロット以外に、整備士、地上スタッフ、 CA、航空管制官など、多くの職種も必要であることは言うまでもない
しかし、いくら、他の職種が充実していても、パイロットがいなくては、飛行機を飛ばすことはできない

逆に、いくらパイロットが優秀であっても

他のスタッフに問題があれば、安全に航空機を運行させることはできない

さて、パイロットは

予期しない危機的状況に直面することもあるが、その経験と、培った操縦技術により、危険を回避する
だから、 「旅客機は世界で一番安全な乗り物」 と言われる
パイロットは、有視界飛行も行うし、計器飛行も行う

いっぽう、医者は

患者の状態観察に始まり、検査結果を見て、それによって診療計画を立てる
医者も、予期せぬ危険な状態に直面することがあるが、経験と智恵で乗り切る
医者も、パイロットと同じく、有視界飛行も行い、計器飛行も行う
検査結果を見て治療するのは、いわば計器飛行だ

医者の代名詞である聴診器は 「器具」 ではあるが

聴診による診断には職人芸的なところがあり、どちらかと言うと、聴診器を使う診断は有視界飛行である
僕が研修医であった頃は、聴診器だけで、心臓弁膜症 8種類と、その程度を、ぴたりと当てる 「聴診の神様」 がいたものだ

もちろん、現代でも聴診器を使いこなすことは望ましい

しかし、心音に関しては、今は高機能の心エコー装置がある
だから、聴診器を使わなくても、トレーニングを受けた臨床検査技師なら、弁膜症の診断をつけることも、その程度を調べることもできてしまう

それでも、そもそも、

「心雑音があるかないか」 を はじめに見つけるのが聴診であることには変わりが無い

肺疾患の診断に関しても

今は X線写真も解像度が良くなり、 CTも多列化しているので、聴診の意義は、昔ほど大きくはなくなってしまった
それでも、電気も放射線も使わない聴診は、有視界飛行として、今でも重要な役割を担う

パイロットの訓練は

緊急事態に対応するためのシュミレーションを繰り返しおこなう

医師も同じ

ただし、パイロットのように、完成されたシュミレーションシステムがないので、実際の患者の診療から、自らを反省したり、評価したりしているのが現状である

そろそろ、医師の訓練に

パイロットの訓練のような、本格的なシュミレーションシステムを取り入れてはどうだろうか?

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