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No.155 座右の銘

2012/05/19

長野県医師会の発行する長野醫報が

「私の座右の銘」 というテーマで原稿募集をしていた
そこで、周囲の人、何人かに聞いてみた
「座右の銘って何かありますか?」

結果

ほとんどの人は、 「そんなものはない」 と答えた
僕にもない
いや、正確にはなかった

だいたいにおいて、 「座右の銘」 などというものは

えらーい人や、世で言う 「成功者」 が、 「私はこれを守って成功した」 みたいな場合に登場するものと思っていた

しかし、考えてみると

座右の銘はないが、 「好きではない銘」 はある
それは
「寄らば大樹の陰」

これを敢えて座右の銘とするならば

「大樹の陰に寄るなかれ」
とでも言うべきか

確かに、先の諺には、一定の真理がある

大樹の陰に寄ることによって、それなりの成功を収めた人を幾人も知っている
とりあえず、大樹の陰に寄っていれば、きっと何かしらのメリットはあることだろう
もっとも、穿った見方をすれば、これは日和見を皮肉っての諺なのかも知れないが ・ ・ ・

しかるに、大人の常識的な、本音の考えは

たいていこんなものではないだろうか
親が子の就職に当たって、 「寄らば大樹の陰だ」 なんて言ったりもする

「有名企業」 には就活希望者が殺到する

それは、 「自分がそこで何をやりたいか」 というよりも、ブランド企業の一員になることが自分のブランドであるかのように、錯覚しているかに、僕の目には映る

しかし、である

大樹には、雷が落ちるかも知れない
(実際、樹木の下の落雷被害が多い)

世界的な大樹であったはずのリーマン・ブラザーズは

呆気なく倒産したではないか
かの拓銀も山一證券も、呆気なく経営破綻した
権力を持った政治家の派閥に入ったら、その政治家が汚職で逮捕された、などといった事だって起こりうる

大企業は 収入も大きいが、支出や負債額も大きい

だから、収支バランスが崩れたり、為替レートの変動によって、多額の赤字決算を計上することは日常茶飯事だ
内部留保や、保有する純資産額の大きい企業は、たとえ数年間赤字経営が続いたとしても、生き残って行くことができるかも知れないが、そうではない、実はもろい体質の 「大企業」 も多い
因みに、今の日本も、後者になりつつある 「大企業」 であると、言えなくも無い

さて、逆に

あまり事業を拡大せず、自らの得意分野だけを続けて、何十年も、したたかに生き残っている、世間にあまりその名を知られていないような中小企業も多い

「大樹の陰」 には、多くの優秀な人材が集まることだろう

だから、いかに優秀であっても、その中で、のし上がって行くのは大変だ
大樹の陰に寄れば、一時の安定感はあるかも知れないが、将来を決するのはあくまで自分である
大樹の陰に身を置いてさえいれば成功するという理屈もない

そこで、敢えて

「大樹の陰に寄るなかれ」
なのだ

「大樹」 は利用するものであるかも知れないが

自分が敢えて身を寄せるものではない

実は、今考えると、そういう自分も

一貫して、大樹からは程遠い道ばかりを、自分で選んで歩んできた

だからなのか

「えらーい人」 や 「成功者」 にはなれなかったけれど、自由度や楽しみも大きかった
今は、そんな自分の生き方に、少しも後悔はしていない

注:この内容は「長野醫報」に投稿した文章を、少し改変したもので、長野醫報に掲載されるか否かはまだ未定です

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