ホーム > Dr.ブログ > No.192 トンネル事故

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

No.192 トンネル事故

2012/12/11

つり天井が落ちるという前代未聞の中央道事故

全国には、これと同構造のトンネルが 49ヵ所あるという
僕の利用する中では、立峠トンネル、恵那山トンネルがこの構造だ

僕は、ここで疑問に感じることが、三つある

一つ目

アンカーボルトの点検を、目視や、打音検査で実施しているというが、道路管理会社側は、この検査で異常があった場合、その箇所だけを修復するつもりだったのだろうか?

建設して何十年も経てば、資材の経年劣化による不具合が生じるのは当然であり、一箇所に不具合が見つかれば、そのトンネルのボルトすべてに劣化が来ていると判断して、全部を改修するべきであると思うのだが

路面は劣化すると改修工事を繰り返している
それは、劣化は誰もが目視でき、かつ直接、走行の安全性に関係するからに他ならない

しかし、トンネルだって劣化する
だから、建設後、何年か経った時点で、定期的改修工事をするべきなのである

二つ目

今回の事故は一枚の天井板が崩落したことにより、連鎖的に何百枚もの天井板が崩落した
これは、そもそも、そんな構造にした設計自体に問題があったのではないか

三つ目

トンネル建設時に、アンカーボルトの固定状態を確認できる検査用通路を敷設しなかったため、アンカーボルトの点検を、 5mの距離から見上げて、目視で行わなければならなかったというが、このような方法による点検では安全性の確保は不完全なことは明らかである
なぜ、後からでも、検査用通路を増設しなかったのか?

トンネルにせよ、橋梁にせよ、供用開始時には万全の安全策を取ったつもりでも、そのあとのメインテナンスが更に重要で、経時的検査と、不具合の生じた場合の対策を考えておくのは常識ではないのか?

報道によると、米国で、 6年前に

日本と同じ工法でつくられているトンネルの天井板が落ちたという、今回と全く同じ事故が起きている
なぜ、その時点で、米国の教訓を生かして、日本のトンネルの総点検をしなかったのだろうか?
また、そもそも、経年劣化が予測される接着剤というもので、大きな荷重を支えるアンカーボルトを固定する工法自体に問題があると指摘する専門家も多い

福島原発の件と同様

日本の 「防災対策」 とは、 「何か事故が起きるまでは、行動を起こさない」 という対策なのか?
それとも、 「トンネルの天井は、未来永劫、永久に初期性能を維持する」 とでも考えていたのだろうか?

高速道路は国道だが

国交省は、民営化した道路管理会社に維持、管理を一任していて、その詳細を把握していなかったとのこと

「道路整備特別措置法」 という法律が

「道路の安全確保は道路管理会社の責任」 としているから、その意味では国交省は法的には間違いではないかも知れない
しかし、社会通念的には、監督官庁として、国交省の責任は免れないように思う

今回の事故は

「高速道は安全に走行できる」 と信じて運転する、利用者の信頼を根底から裏切った
しかも、運転者は高額の通行料金を支払っているのだ

高速国道の利用者、いや国民は

道路管理のあり方に対して、もっと声を上げてもいいのではないだろうか

 |