2013/01/09
体重も 100キロ近くある
学生時代はラガーマンであったという
パチンコ、競馬が趣味
通勤は大型バイクで、そのサングラス姿は少々コワイ
酒はめっぽう強く、相手は朝まで付き合わされることがしばしば
が彼の口癖である
傍から見ると、まことにもってテキトー男である
というか、彼は大学医局という奇怪な組織に在籍することの意義を見出せなかった
医局は彼を異端扱いし、結局、大学から最も遠く離れた、東新記念病院に赴任 「させられ」 て、 12年が経つ
仕事が終れば勤務時間内でもさっさと帰ってしまう
当直が大嫌いで、下級医師に酒を奢って、当直をなかば強引に交代させる
「夜に働くのは泥棒とネズミだけ」 と発言して、皆の顰蹙を買ったこともある
こんな彼が、なぜ 12年もの間、解雇もされないで留まっていられるのか?
「昇龍会」 という、その名もどこか怪しげな医療法人が運営し、 380という中途半端なベッド数を持つ、急性期型の総合病院である
それでも地元に基幹病院がないため、住民にとっては大切な存在だ
どこか凄みのある顔貌から、病院の用心棒的存在となっていた
白衣を着ていなければ、誰も医者とは信じない
たとえば、病院のどこかで、言われのないクレームがあると、必ず須田が呼ばれる
そして、クレームの内容を聞き終えるまでは、一切喋らない
クレームの訴えが終ったと見ると、おもむろに、彼は口を開く
「それだけですか?」
「で、どうしろと?」
「何だ、その態度は!」 ということになってしまうのだろう
しかし、彼の場合は、 「いえ、別にいいです」 となり、いわれのないクレームはそこで一件落着する
便利な男だ
そう、それがゆえに、 12年間も東新記念に勤務できているのだった
「彼の曽祖父は任侠関係の大ボスであった」 という、まことしやかな噂が病院内に広まっているが、当事者の彼は自分の出自に関しては何も語らない
須田は自然気胸の患者を治療した
その時、隣のベッドにいた、同じく自然気胸の青年が緊張性気胸からショックに陥った
「救急室ですぐに処置していれば、あんな危険なことにはならなかったのに」
「まったく判断の悪い奴だ」
- つづく -
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません