ホーム > Dr.ブログ > No.222 13年

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

No.222 13年

2013/03/04

日曜日の深夜、 「へうげもの」 というアニメが放映されている

茶人かつ武人である古田織部の生き方、そして武と数寄の間で揺れる古田重然の葛藤を描いた物語である

時は 16世紀末

登場人物は 100人ほど
実在した人や名物ばかりである

時代考証もしっかりしていて、たとえば千利休の身長が当時としては異例に高かったことも忠実に描写されている

従来の戦国時代ドラマとは一線を画するやり方

一茶人を中心とした物語という手法でこの時代を切り取って見せてくれる
新鮮な発見が多いアニメである

今放送されているのは秀吉が覇者となった時代

1590年の出来事を、月単位で追う
ここで僕は、改めて秀吉という人物に注目をする

18歳で信長の草履取りになり、 33歳で、初めて一国の主、長浜城主となる

その間、 15年
常に死と隣合わせ、戦に明け暮れ、幾多の選択を迫られ続けた日々であっただろう
やがて信長が没すると、鬼柴田を破り、 46歳で大坂城を完成させる

長浜城主となってから正しい選択を続けて遂に政権のトップに立つまでに要したのは、たったの 13年

常に何かの事件や戦が起きた、まことに慌しい 13年であったことだろう
しかし、野心家の彼にとっては最も充実していた、幸せな 13年であったのかも知れない


48歳で豊臣の姓を名乗り

ここから始まった彼の天下人としての人生は、たったの 13年間で終焉を迎える
天下人としての彼の在位期間は意外に短いのである

信長は

広い視野を有し、軍師を持たず、すべて自分ひとりで多くの決断をし、家臣を単なる道具として使い、天才的な戦略・戦術・外交術を駆使した、非情なるオンリーワンの人であった

秀吉は

信長とは違って平凡な武将ではあったが、持ち前の機転のよさ、人たらしともいわれた懐柔の才能や外交能力により、信長に有用な道具として重用されて出世した

秀吉は人を押しのけて頂点に立った

すると、 「今度は自分が追い落とされるかもしれない」 という不安にかられたためか、もはや豊家の権力維持のみが彼の生きる目的となり、 「豊臣」 という姓とは裏腹に、家臣や民を顧みなくなった

彼は、戦国の世を生き抜く術には長けていた

しかし、残念ながら日本を統治する器の人ではなく、戦国大名の延長に過ぎなかったと僕は考える

そして、彼にとって、天下人となってからの 13年間は、決して幸せな時間ではなかったように僕には思われる

61歳、死の床で彼は何を思ったのだろう

  • 戦国を平定したことに対する達成感か
  • 秀頼を遺してゆくことに対する不安か
  • 自分のために落命した人々のことか
  • これからの日本の統治か

我々は知るすべもない

歴史に 「もし」 はないが

たとえ秀吉という人間がいなくても、江戸幕府は誕生したと思う

彼がこの世に存在したがゆえに犠牲になった人は、数知れない

秀吉は日本をまとめる上で一定の役割を果たしたことは事実

しかし、彼は戦国に咲いたあだ花であったことも事実ではないだろうか

 |