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No.233 おばあちゃんが怖くなった

2013/04/15

「最近、おばあちゃん、何か変なんです」

杉田研作の外来に、いつもは一人で通院してくる桜井トキさん

87歳の桜井さんは、年齢の割にしっかりした人で、高血圧と、ごく軽い糖尿病以外には特に病気らしい病気はない、陽気なばあさんだ
しかし、どういうわけか、今日は、息子の嫁と一緒に診察室に入ってきた

杉田 : 「どういう具合に変なんです?」

嫁 : 「普段は温厚な人だったんですが、ささいなことで怒りっぽくなって、ちょっとしたことですぐ口論になるんです」

「また、やたらと水分を摂りたがるんです  認知症の始まりじゃないでしょうか?」

認知症には、アルツハイマー型の他に

以前 「ピック病」 と呼ばれていた、 「前頭側頭葉変性症 (FTLD) 」と分類されるものがあり、このタイプは確かに人格の急変を起こす

ただし、人格の変化と言っても

万引き、破廉恥などの反社会的行動を平気でおこない、性格は自分勝手、わがままになるというのが典型である

「他人に攻撃的になるだけ」 というのは FTLDの病像とは少し異なる

嫁が続ける

「それに、最近、鬱病っぽい、って言うか、理由もなく、ふさぎこむことも多くなって来たように思います」

「これは精神科に紹介するべきだろうか?」

杉田は考える

杉田の頭の片隅にちらつくのは、 「新しい症状が出現したら、今投与している薬が原因でないと結論できるまでは、薬が原因と考える」 の原則

改めて、自分の処方内容を

それぞれの薬品の添付文書で確認してみたが、桜井さんの症状に当てはまるような記載はない

杉田 : 「どこか、他の医院で何か薬を処方されていませんか?」

すると嫁から意外な言葉が返って来た

- つづく -

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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