2013/04/17
前回の話 : 「おばあちゃんが怖くなった」
嫁 : 「おばあちゃんは、古くから付き合いのある、町内の道嶋先生に通っていて、薬をもらっていますが・・・」
杉田 : 「今、その薬、持ってます?」
嫁 : 「今は持ってきてませんけど、これではいけませんか?」
そういって、彼女は道嶋医院の発行した、 4つに折りたたんだ薬剤情報提供書をバッグの中から取り出した
バイアスピリンとか、ドキサゾシンとかアクトスなど、多彩だった
活性型ビタミンDのカプセルと、アスパラーCA錠が処方の中にあったことだ
カルシウム製剤を、活性型ビタミンDと同時に投与すれば、確かにカルシウムの吸収は格段に良くなる
しかし、この年齢の女性にカルシウムを投与したところで、骨折が有意に減少するなどというエビデンスはない
恐らく、この医院では、高齢女性に対して、ルーチーンに、カルシウムと活性型ビタミンDを投与しているだろうことが、容易に推察できた
杉田は、さっき採血した血清の残りを使って血清カルシウム濃度測定をオーダーした
13.4mg/dl
正常範囲が 8.5から10.2mg/dlだから、明らかに高すぎる
口渇、筋力低下、便秘、嘔気、腎障害など多彩だ
しかし、忘れてならないのは、精神状態の変化である
だから、活性型ビタミンDと カルシウム製剤を同時に投与する際には、定期的な血清カルシウム値の測定が必要とされている
後になってわかったことだが、道嶋医院では今まで一度も、血清 Ca値をチェックした形跡がなかった
東新記念病院でも、定期の血液検査は、ほとんどすべての項目をカバーするルーチーンセット検査 Aで行っていた
しかし、10項目以上では 「まるめ」 になるため、このセットには異常頻度の低いカルシウムや マグネシウムは省かれている
これが盲点だった
活性型ビタミンDと カルシウムの投与を中止したところ、 2ヶ月経ったころだろうか
トキさんの人格は、以前のおだやかなものに戻っていた
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません