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No.234 ビタミンで人格変化?

2013/04/17

前回の話 : 「おばあちゃんが怖くなった」

嫁 : 「おばあちゃんは、古くから付き合いのある、町内の道嶋先生に通っていて、薬をもらっていますが・・・」

杉田 : 「今、その薬、持ってます?」

嫁 : 「今は持ってきてませんけど、これではいけませんか?」

そういって、彼女は道嶋医院の発行した、 4つに折りたたんだ薬剤情報提供書をバッグの中から取り出した

処方内容はビタミンEとか

バイアスピリンとか、ドキサゾシンとかアクトスなど、多彩だった

しかし、杉田の目にとまったのは

活性型ビタミンDのカプセルと、アスパラーCA錠が処方の中にあったことだ

カルシウム製剤を、活性型ビタミンDと同時に投与すれば、確かにカルシウムの吸収は格段に良くなる

「高齢女性には、骨粗鬆症が多いから」 との理由で、処方されているのであろう

しかし、この年齢の女性にカルシウムを投与したところで、骨折が有意に減少するなどというエビデンスはない

恐らく、この医院では、高齢女性に対して、ルーチーンに、カルシウムと活性型ビタミンDを投与しているだろうことが、容易に推察できた

「そうか、性格変化も口渇も、すべては高カルシウム血症の症状ではなかったのか?」

杉田は、さっき採血した血清の残りを使って血清カルシウム濃度測定をオーダーした

十数分後、血清カルシウム値が判明した

13.4mg/dl

正常範囲が 8.5から10.2mg/dlだから、明らかに高すぎる

高カルシウム血症の症状は

口渇、筋力低下、便秘、嘔気、腎障害など多彩だ

しかし、忘れてならないのは、精神状態の変化である

物事に無関心になったり、うつ病に似た抑欝、人に対する攻撃性や興奮などが出現する

だから、活性型ビタミンDと カルシウム製剤を同時に投与する際には、定期的な血清カルシウム値の測定が必要とされている

後になってわかったことだが、道嶋医院では今まで一度も、血清 Ca値をチェックした形跡がなかった

他院でカルシウム製剤が投与されていることを知らなかったので

東新記念病院でも、定期の血液検査は、ほとんどすべての項目をカバーするルーチーンセット検査 Aで行っていた

しかし、10項目以上では 「まるめ」 になるため、このセットには異常頻度の低いカルシウムや マグネシウムは省かれている
これが盲点だった


副甲状腺の異常がないことを確かめ

活性型ビタミンDと カルシウムの投与を中止したところ、 2ヶ月経ったころだろうか

トキさんの人格は、以前のおだやかなものに戻っていた

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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