2013/04/19
74歳の谷口銀次郎さんに付き添ってきた彼の妻、佳代が訴える
いっぽう、妻の佳代さんは、一瞬娘かと思わせるほど若く見える
「今はやりの歳の差再婚だろうか?」
「いやいや、そんなことに興味を持ってはいけない」
そう自戒しながら、杉田は話を聴く
少し前まではしっかりしていた人なのに、最近、作り話をしたり、さっき言ったことも忘れていたり、自分の子の名前が言えなかったり、などなど、いろいろな認知症的な症状が出てきたという
「こんどは おじいちゃんかよ」
心のなかで呟きながら、杉田は谷口さんのカルテを遡りながら読んでゆく
もともと、呼吸器内科の三橋先生が診ていた患者である
最近、三橋先生が開業のため退職したので、杉田が今日から診療を引き継いだばかりだ
糖尿病や脳梗塞既往などの記載は見られず、処方はアリセプト、降圧薬 2種類、抗高脂血症薬くらいのものだったが、少し気になる処方が一つある
バルプロ酸ナトリウム、これは抗痙攣薬である
「癲癇 (てんかん) でもあるのだろうか?」
アリセプトが入っているということは、旧主治医の三橋先生がすでにアルツハイマー型認知症と診断していたということだろう
「三橋先生にも話したんですけど、 「加齢による認知症ですね」 としか言ってくれなくて」
杉田は、とりあえず頭部CTを撮ることにした
- つづく -
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません