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No.235 謎の脳萎縮

2013/04/19

「主人が最近変になっちゃったんです」

74歳の谷口銀次郎さんに付き添ってきた彼の妻、佳代が訴える

谷口さんは元銀行員で、長身の、顔立ちも整った老紳士である

いっぽう、妻の佳代さんは、一瞬娘かと思わせるほど若く見える

「今はやりの歳の差再婚だろうか?」

「いやいや、そんなことに興味を持ってはいけない」

そう自戒しながら、杉田は話を聴く

佳代の話によると

少し前まではしっかりしていた人なのに、最近、作り話をしたり、さっき言ったことも忘れていたり、自分の子の名前が言えなかったり、などなど、いろいろな認知症的な症状が出てきたという

「先日はおばあちゃんがビタミンDのせいで変になった」

「こんどは おじいちゃんかよ」

心のなかで呟きながら、杉田は谷口さんのカルテを遡りながら読んでゆく

谷口さんは

もともと、呼吸器内科の三橋先生が診ていた患者である
最近、三橋先生が開業のため退職したので、杉田が今日から診療を引き継いだばかりだ

カルテからは

糖尿病や脳梗塞既往などの記載は見られず、処方はアリセプト、降圧薬 2種類、抗高脂血症薬くらいのものだったが、少し気になる処方が一つある

バルプロ酸ナトリウム、これは抗痙攣薬である

「癲癇 (てんかん) でもあるのだろうか?」

アリセプトが入っているということは、旧主治医の三橋先生がすでにアルツハイマー型認知症と診断していたということだろう

佳代は続ける

「三橋先生にも話したんですけど、 「加齢による認知症ですね」 としか言ってくれなくて」

脳血管性認知症を除外するため

杉田は、とりあえず頭部CTを撮ることにした

- つづく -

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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