2013/05/07
少々こわおもての彼の笑顔を見た人は殆どいないし、その年齢や家庭生活は謎に包まれていて、果たして既婚者なのかも知る人はいない
呼吸器内科医は、東新記念病院には彼一人である
彼は、呼吸器にしか興味を示すことはないが、誰の相談にでも、呼吸器のことに関しては的確に答えてくれる、まことに有難い存在でもある
ギョロッと彼女を見上げると、彼はカルテを閉じて、呼吸不全に陥っている女性患者の画像を開く
鮎川 : 「はっ? インフルエンザ は い え ん ・ ・ ・ 」
遠藤 : 「まず、心陰影が大きい 心基部から広がるような陰影で、胸水もある」
「そりゃ、どこかに肺炎像くらいはあるかも知れないが、呼吸不全のメインは心機能低下だね インフルエンザ心筋炎じゃないの? CT撮った?」
彼はそれだけを言うと、自分のカルテ整理作業にもどった
「今度は循環器に相談か?」
「その前に心エコーくらい撮っておかなければ」
「いや 胸部 CTも必要だし ・ ・ ・ ・ ・ 」
- つづく -
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません