2013/05/17
深夜、救急隊の連絡を最初に受けたのは、今度も鮎川真奈実だった
一瞬、インフルエンザ心筋炎の悪夢が鮎川の頭をよぎった
深夜という時間帯を考えると、仕事中だったのか?
救急隊は紙のバッグを、患者の口と鼻に当てている
経皮的酸素飽和度は 100%
呼吸数は 40回
どうやら今度は本物の過換気症候群のようだ
真奈実は口には出さず、救急隊からバックを預かった
そう教わってきたから、真奈実は、普段絶対に使わないような、「やさしい」言葉で問いかける
しかし、患者は、はあはあするばかりで、真奈実の問いかけなど聞いてはいない
「ははーん、二酸化炭素が抜け過ぎて、呼吸中枢が抑制されたか?」
真奈実は患者の息遣いを聞きながら、カルテを書いていた
聴診すると、心音は聞こえるが、呼吸が止まっている
「無呼吸が暫く続けば炭酸ガスが溜るから、呼吸が再開するだろう」
そう考えてはみたが、さすがに呼吸停止は心配なので、真奈実は患者を観察し続けた
患者はまだ呼吸をしない
「先生、サチュレーション 86です あっ 79 」
看護師が小声で囁く
- つづく -
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません