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No.243 本物の過換気症候群

2013/05/17

「 22歳女性、過換気症候群のようです」

深夜、救急隊の連絡を最初に受けたのは、今度も鮎川真奈実だった

一瞬、インフルエンザ心筋炎の悪夢が鮎川の頭をよぎった

搬送されてきた女性は化粧の濃い、一見して水商売風

深夜という時間帯を考えると、仕事中だったのか?
救急隊は紙のバッグを、患者の口と鼻に当てている

経皮的酸素飽和度は 100%

呼吸数は 40回

どうやら今度は本物の過換気症候群のようだ

「今ではペーパーバッグを使わないことを知らないのだろうか?」

真奈実は口には出さず、救急隊からバックを預かった

「患者に話させるのが一番」 (話している間は過呼吸ができない)

そう教わってきたから、真奈実は、普段絶対に使わないような、「やさしい」言葉で問いかける

しかし、患者は、はあはあするばかりで、真奈実の問いかけなど聞いてはいない

しばらくすると、患者の荒い息遣いが少し静かになった

「ははーん、二酸化炭素が抜け過ぎて、呼吸中枢が抑制されたか?」

真奈実は患者の息遣いを聞きながら、カルテを書いていた

まもなくすると、呼吸音が聞こえなくなった

聴診すると、心音は聞こえるが、呼吸が止まっている

「無呼吸が暫く続けば炭酸ガスが溜るから、呼吸が再開するだろう」

そう考えてはみたが、さすがに呼吸停止は心配なので、真奈実は患者を観察し続けた

3分が経った

患者はまだ呼吸をしない

「先生、サチュレーション 86です あっ 79 」

看護師が小声で囁く

- つづく -

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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