ホーム > Dr.ブログ > No.250 性善説と性悪説

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

No.250 性善説と性悪説

2013/07/22

「渡る世間は鬼ばかり」 とか 「人を見たら泥棒と思え」

などという格言がある

これは、実は世の中には善い人が多いからこそ、作られた格言、忠告と僕は思う

なぜなら、世の中、悪い人ばかりならば、こんなことは当たり前であって、何も格言にする必要がないからだ

元来、生まれっぱなしのヒトは

他者と闘争したり、他者の所有物を奪って自分を守り、他者を犠牲にして自分だけを大切に行動する生き物なのだろう

これは、ヒトが動物である以上、いわば生まれながらに備わった本能である

そういった意味では、性悪説は正しい

しかし、ヒトは言語を持っているから

教育によって、 「他者を尊重することが、結局自分を守ることに繋がる」 ということを学ぶ

そうしてヒトは、他人に対して誠実な 「善い人」 になって行く
世界中の多くの人は、社会の中で何らかの教育を先輩の 「ヒト」 から受けているだろうから、きっと多くの人は 「善い人」 なのだ

そういった意味では、性善説も正しい

しかし、ほんの一部だが

「善い人」 でない人が存在することも事実である

そういった人達によって悪事がおこなわれ、犯罪が起きる


さて、近年、英国の権威ある医学雑誌 「ランセット」 に掲載された

ある日本人研究者の論文の内容に不正があったり、内容に歪曲が加えられていた事件があり、医学界を震撼させた

その論文は

ある大手製薬メーカー N社の看板商品である降圧薬の効力を実証したものだが、結果に不自然さがあったり、統計処理をした人が N社の社員であり、しかも N社という所属を隠して他の組織の職員を装って N社に有利な結果の出るような統計処理をしたりしたことが発覚した

当該研究者はN社から

何らかの金銭的な見返りを受けて、捏造データを論文に仕立て上げたと考えるのは推論に難くない

一般に医学雑誌は

提出された論文の査読をおこない、論文の意義、真偽を追求するので、権威ある雑誌の場合、提出された論文の掲載率はとても低い

前述の論文が、掲載率の非常に低い 「ランセット」 の査読を無事クリアしたということは、査読によって論文の真贋を確かめることが、いかに難しいかということを意味する

論文の査読者は

研究者のモラルを信じるのが基本であろうから、実験ノートの提出までは求めない

研究者性善説なのだ

 |