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No.255 コンピューターと非正規雇用

2013/08/21

前回の話 : コンピューターが雇用を駆逐する

販売は順調であるのに

為替レートの変動によって赤字決算に転落する大企業がある

だから、業績が上がっても、企業は赤字対策として資産の内部留保につとめることになる
必然的に、利益分配は社員にはなされない

すなわち、 「景気」 が良くなっても、今の日本では、すでに国民の所得は増えない構造になってしまっている

「成長戦略」 とは、つまるところ、企業だけを成長させる戦略のことと解するのが正しい

ガソリンに代表されるように

今後、物価は上昇し続けるだろうが、国民の所得は下がり続ける

早晩、スタグフレーションに陥ることは、今の流れからすると、決して危惧のレベルではない
いや、すでにスタグフレーションに突入したのかも知れない

企業は

生産規模を拡大する時には人員が必要となるが、生産規模を縮小せざるを得ない時は労働人口を減らしたい

企業の業績は、嘗て世界経済が比較的安定していた時期とは異なり、今は複雑な外交問題も絡むことなどで、会計期ごとに乱高下する
したがって、企業が生き残るためには、小回りの効く雇用調整が必須となる

しかるに正社員が多くては人員調整がやりにくい

利潤を追求することが企業の目的であるのなら

非正規雇用を基本にすることが、経営論理からすれば正しい

営業費用の中で大きな割合を占める人件費
契約期間が切れればいつでも解雇できる派遣社員は、人員調整に便利この上ない

知能を持つコンピューターは

情報の収集や、物作り、さらに営業といったことさえこなす

すなわち、経験から培った熟練の技術を持つ人材は、もはや企業にとって人件費食いの不要な存在になったわけである

非正規雇用者数は 2003年頃に正規雇用者と総数が逆転し

今では 35%を非正規雇用者が占め、現在も増え続けている (総務省統計)

非正規雇用は正規雇用にくらべて所得が低いし、またいつ解雇されるか分からない不安もある

しかし、昨今の厳しい経営環境において

会社が国内他社や、世界の企業に打ち勝って生き残ろうとすれば、今後、非正規雇用へシフトする傾向はさらに拍車がかかることだろう

すでに 「一部の幹部社員以外は全て非正規雇用」 といった企業も多いし、たとえ今はそうでない企業にしても、近い将来、社員は非正規雇用ばかりになるに違いない

すなわち、遠くない将来

低賃金で不安定な雇用のまま、あるいはアルバイト生活のまま、一生を終える国民が大多数となることを意味する

経済的理由での非婚者が増加し、少子化も加速する

少数の正規雇用者と

大多数の非正規雇用者との所得格差は大きく開き、 「未曾有の経済格差社会」 の到来も遠くはないであろう

非正規雇用者数を減らすには、何らかの立法しかない

抜け道のない 「非正規雇用規制法」 などの法整備
しかし、 「正規社員の解雇規制緩和論」 すら浮上している昨今、非正規雇用を規制するなど、政府にできるわけがない


さて、 「内閣府特命担当大臣 (少子化対策担当) 」 などという

意味のよく分からない閣僚ポストがあるが、少子化がどうしてそんなにいけないのだろう
「将来雇用が激減する」 という文脈では 「少子化」 はむしろ好ましいのではないか
雇用が減少するのだから、もし出生率上昇で労働可能人口が増えれば、失業者が増えるだけだ

その意味で

「少子化」 は自然の流れとして、許容されるべきではないのかと考える

「少子化」 は しばしば 「高齢化」 とリンクして論じられる

要するに、高齢者が増加し、それを支える壮年者が減ることが、社会保障制度を困難にするという、まことに近視眼的な論理なのだ

しかるに今の団塊世代高齢者は 20から 30年もすれは死に絶える

あとは少数の青壮年が残るだけだ
再び言うが、労働需要が減少を続けるであろう将来の日本では、少子化こそが雇用需要にマッチするのではないか

もちろん

少子化によって消費は低迷し、税収は減り、国家予算は不足する
しかし、少し異なる視点からみれば、人口が減少することにより、インフラ整備や社会保障、公共事業に費やす費用は減少し、化石燃料の輸入量だって減少するはずだ

可住面積が小さく、かつ資源の少ない日本に

人口 1億 3000万もの人が住むのは不自然だ

「少子化が問題だ」 と識者は叫ぶ

そして、日本の人口が予測計算どおりに減れば、 0人になる日が来る

しかし、そんなことは常識的に考えてありえない

統計よりも常識のほうが、多くの場合正しい
すなわち、日本の人口はある数字で落ち着くはずだ

4000万人程度がちょうどよいのではないだろうか

予想をくつがえして

仮に人口が増加に転じ、雇用が減り続ければ、職につけない若者がさらに増えることになる
仮にそんな時代が来たとしよう

受け皿は自衛隊 (そのころは 「国防軍」 と名称が変わっている?) かも知れない

自衛隊だってコンピューターが導入されてはいるが、暫くの間は戦闘員の数が必要で、兵員数は兵力の指標ともなっている

コンピューターの話が

いつのまにか雇用の話になり、さらに少子化の話になってしまった

でも、スマホアプリに興じている世代は

自らの楽しんでいるコンピューターライフが、いずれ雇用の問題に発展することに、きっとまだ気づいてはいない

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