2013/09/11
スタンフォード大学教授のエイブラハム・バルギーズはそう話す
「不必要だが形式として大切なもの」 という意味ではない
むしろ、今の医療にはこれらの 「儀式」 が失われつつあるから、患者と医師との関係が良くならないのだと言いたいのだろう
かつて 「聴診の神様」 と呼ばれた医師は、その存在意義が薄れた
いや、そんな医師はすでにいなくなったのかも知れない
触診や打診は 「確度の低い検査法」 との印象を持たれるに至った
今や、エコーも使わず打診だけで胸水穿刺をするなど、もってのほかの行為とされるだろう
「儀式」 の対極にあるのが 「i-Patient」 だと
「i-Patient」 とは、コンピューター上の患者の検査データーや所見、情報のみによって、カンファレンスをおこなう、現在の 「進んだ」 システムのことだ
この願望は現代においても昔と何ら変わらない
しかし、現代医療の現場では、バルギーズの言う 「儀式」 を、 「意味がないから」 との理由で行わない医師が多くなっていることは、残念ながら事実だろう
患者と向き合って話をするのは医者の 「礼儀」 ではないだろうか
なぜなら、一般的な診察室の風景はこうだ
そこに、順番で呼ばれた患者が、医師の右か左のドアから診察室に入って来る
医師はコンピューターの画面を見ながら、入室した患者の側に顔を向け、体はデスクに向けたままで、患者と短い会話をする
患者の言うことをデスク上のコンピューターに入力、あるいはカルテ記載する時は、すでに医者の顔は患者の方向を向いていない
しかし、患者はデスクに向かっている医師に懸命に語りかける
その間、医師は患者に聴診器を当てることはない
医師はデスクに向って、コンピューター入力などの作業をしている
そして、診察室を出てゆく患者に向かって、患者の目を見ないまま、 「お大事に」 という
いまどき、コンビニ店員だって、釣銭を渡すとき、必ず客の目を見るように教育されているというのに
近くのホームセンターに行き、集成材で出来た 120× 35cmの板を買ってきた
診察室のデスクの引き出し 3つを引き出した状態の上に集成材を乗せる
こうすることで作業台はデスクだけの場合よりずっと前に突き出すから、自分の椅子を、左にある患者の椅子の真正面に置くことができる
ついでながら、木の香りが診察室中に広がりいやされる
患者が診察室に入った時には、すでに患者の真正面に僕は位置している
そして、入ってくる患者を笑顔で迎える
もちろん、患者を呼び込む直前にはコンピューター上に患者の画面を出しておく
暫く、ふむふむと患者の話を聞いている時も、僕は患者の正面を向いている
カルテに名前があるから、それを 「ちら見」 しながら 「○○さんは・・・」 と姓で語りかける
患者の背中の聴診をする僅かな時間を利用して右手でマウスを動かし、処方を出し、次の診療予約を取る
超高齢者などには、その手を握りながら、もしくはその肩に軽く手を置いて、 「お大事に」 と言う
少なくても患者の目をしっかりと見ることができるようになった
それと同時に、患者との会話時間もふえた
そして、時には患者と世間話もできる余裕ができた
そして、何より、単調だった外来診療が楽しくなった