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No.265 坊主頭

2013/10/04

僕はずっと前から坊主頭だ

「丸刈り」 ではない
僧侶のようなつるつる頭、少しカッコよく言えば スキンヘッド
眉毛も剃っている

勿論、昔は頭髪があった

大学の助手時代

教授診察のシュライバー (書記) を、若い研修医と 2人で務めていた時のこと
その研修医が何かを一生懸命に描いているのに目が行った
彼は暇にまかせて、僕の後ろ姿を診察机の片隅に、鉛筆で描いていた

しかし、その絵を見た僕は愕然とした
なぜなら、絵には、頭頂部の毛がない
まるで教科書で見た、フランシスコ ・ ザビエルのような僕

それまで自分の頭頂部など見たことがなかったので

帰宅後、改めて鏡で自分の頭を眺めた
そして、確かに、頭頂部がかなり薄いことに初めて気付いた
その時、 「ええい、いっそのこと、全部剃ってしまえ」
と、坊主頭になることを決めた

坊主頭のメリット

  • 禿げている部分が、近くで見ないとわからない
  • ベッドサイドでの中心静脈確保、気管切開などの手技の際、頭からふけやごみが術野に落ちない
  • 白髪が目立たないから年齢不詳 (白髪の程度が自分にもわからない)
  • いつも涼しいし、頭が蒸れない
  • 「形が良い」 と、どんぐり型の頭そのものを褒められる (僕の場合です)
  • 「洗髪」 が不要 (洗顔と同時に頭を洗うが、髪を乾かす手間が省ける)

このように清潔で合理的な丸刈り

その昔、帝国陸軍軍人が丸刈りであった理由がよくわかる
戦地では、丸刈が、さぞ便利であったことだろう

まだある

  • 浴室の排水溝は頭髪が詰まらないのでいつも綺麗
  • 理髪代もかからないし、理容店に行く手間も要しない
  • 何かの事件に巻き込まれても、頭髪が現場に残留することがないので証拠が残らない?

おっと、そんな悪いことはしませんが

デメリット

  • 炎天下では頭が熱いし、雨が降ると、頭が冷たい
  • 僕は長身だから、鴨居や救急室の無影灯にしばしば頭をぶつけるが、頭髪がないと、とても痛いし、血が出る

ある時、急いで車に乗り込もうとして、ルーフに頭をぶつけて痛くて涙が出た

僕は街に出る時、紫外線よけに少し派手目のサングラスをかけ、少し派手目な服装と、両手に複数の幅広の指輪、ネックレスをつけることが多い
すると、大柄でスキンヘッドの僕に接するショップ店員は、妙に丁寧な言葉を使う

もしかして 「怪しい人」 とでも思われているのか?
これもデメリット

しかし、こう見てくると

坊主頭のメリットは デメリットより遥かに多い
だから僕には薄毛を気にする人の気持ちがわからない
薄毛に悩むくらいなら、いっそのこと坊主頭になればいいのにと思ってしまう
こんな便利なヘアスタイルは他にない

僕は毎朝

シェーバで、つるつるになるまで頭髪と髭と眉毛を入念に剃りあげる
この間は何かを考えることに集中するにはちょうど良い時間だ

剃りあがって、手を当てると殆どざらざら感がない爽快感

特に光るものを何も持っていない僕だが、剃りあがった後の頭を鏡で見ると、見事に光っている
そう、僕にも光るものがあったのだ

エピソードその 1

回診で、とある高齢の女性に
「今日はいかがですか?」
と問いかけたら

「どこのお寺さんが来なしただか?」
と聞き返された

ナースが慌てて僕を指差し
「これは先生ですよ 和尚さんじゃないです」
と言っているのにも拘わらず、耳の遠いおばあちゃん
ありがたそうに僕に手を合わせる

しかし、残念なことに、僕はお経が読めない
ナースもナースで、僕のことを 「これ」 扱いだ

エピソードその 2

ある病院で糖尿病教室を開催した
4階の会場まで、順路を示す案内版が何枚か貼られる
「糖尿病教→」

何としたことか、 「教室」「室」 が抜けているではないか

聴衆の一人から言われたこと

「先生は上下とも白衣で坊主頭だから 「糖尿病教」 という新興宗教の教祖みたいだ」

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