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No.276 ワープロ

2013/12/16

我々は肉筆で漢字を書かなくなった

だから漢字を書けなくなった
「読めるけど書けない」 という漢字、熟語はきっと誰にでも、たくさんあるだろう

すべてがコンピューターのせいだ、とまでは言わないが

IT技術の進歩に伴い、日本人は漢字が書けなくなる
もしかしたら欧米人だって、コピーアンドペースト機能、スペルチェック機能などの多用で、スペルが正確に書けなくなっているのではないだろうか

肉筆で文章を書くのが苦手な僕だが

僕が社会人になった時には、すでにワープロがあり、幸い、文章を肉筆で書くことは殆どなかった
殊に、論文を書く時には、ワープロほど便利なツールはないと感じたことを記憶している
僕より少し前の世代の人達は、電動タイプライターを使っていたようだ

さて、我が病院は未だ電子カルテではないので

ボールペンを使う機会は、まだある

しかし、いずれ電子カルテになれば、一度もペンを握らない日々の連続となるだろう

医師には多種類の書類を書くという仕事がある

  • 診療情報提供書 (紹介状)
  • 生命保険の診断書
  • 院内紹介状
  • 介護保険主治医意見書
  • 訪問看護指示書
  • 医療要否意見書
  • 診断書

など

これらの書類は、空欄をワープロで埋めてゆくだけの物も多いから、作成に要する時間は極めて短いかわりに、漢字を書く機会は確実に減っている


近い将来

漢字を書く機会は、きっと自分の氏名の署名の時くらいになってしまうだろうし、筆記具すら不要の世の中になるのかもしれない

寺子屋から続いた学習の基本は 「読み、書き、そろばん」

このうちの 「読み」 は残るけれども 「書き」「そろばん」 は不要の時代になってしまったと言っても過言ではない

ワープロによる文章作成で育った僕は

紙とペンを前にしても、考えがまとまらず、文章が全く浮かばない
逆に、ワープロで書き始めると、はじめは何も考えていなくても、自然に考えがまとまり、なかば自動的に文章が出来上がってゆく

ワープロ書きでは

たとえ書けない漢字があっても平仮名入力で変換されるとか、コピペができるとか、そんなレベルの話ではない
キーボードを操作するだけで文章が出来てゆくという不思議

いや、実は不思議でも謎でもない

「何も考えていなくても、自然に考えがまとまり ・ ・ ・ 」 というのは正確ではなかった

僕は、書きたいことを箇条書きのように、単に羅列することから始める

そして、関連ある文をくくり、段落とする
これを繰り返しているうちに文章が出来てゆくのである
やはり、ワープロのコピペ機能が大切であったのだ


さて、それでは文章作成に紙は不要か、と言うと、決してそうではない

ワープロで作成した文章は、紙に出力すると

論理的誤りや、文章スタイルのまずさ、同じような表現の繰り返し、段落の分け方、句読点の位置などが急に目につくようになる
不思議なことに、これらはワープロの画面をいくら眺めていても、見えてこないものだ

だから、文章を作る時の、僕の手順は

ワープロで試作文を作成
→ プリントアウトしてペンで校正
→ 校正部分をワープロで訂正
→ プリントアウトして、またまたペンで校正

この繰り返しで推敲を重ねる

これは僕に限ったことではなくて、誰もがそうなのかも知れないが

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