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No.295 突発性難聴

2014/02/21

外来診療中の午前 11時ごろ

突然、僕の右耳が聞こえなくなった

キーンというような高調の耳鳴りが右に聞こえるだけ

左耳を塞いで右耳だけで人の声を聞いてみる

すると、全く聞こえないのではないが、かなり音は小さく、他人の声がとても不明瞭で内容がよくわからない

「これは、突発性難聴に違いない」

きっと、もう治らないだろう
諦めの早い僕は、すぐ観念した

人は歳を取るにつれ、いろいろな喪失体験が増えてゆく

10年前は突然左目に飛蚊症が現れ

眼科受診したところ、 「網膜裂孔です」 と診断された
強い近視の人では、時折あることらしい

そして、網膜はく離を防ぐ目的で、レーザー凝固術を受けた

飛蚊症は、硝子体に出血したためとのことで、レーザー凝固を受けても当然治るわけもなく、以後、文字を読みづらくて仕方なかった

レーザー凝固のおかげで

その後、今のところ、網膜剥離を起こしてはいないが、飛蚊症と、夜、電灯の周りにぼんやりと霞んで見える暈は治らない
もう諦めているが、最近は慣れてしまって、意識することもない

今度は耳だ

「まあ、まだ左耳が聞こえるから、いいか」

一瞬そう思った

しかし、次の瞬間、 「まてよ、左耳も突発性難聴になったら、よく遭遇する耳の遠い老人ではないか」
そう考えると、うんざりした

「こうしてだんだん体の機能も喪失していくんだ」

寂しいが、生きていれば必ず経験する過程だから仕方がない
暗い気持ちになりながら、外来診療は、何食わぬ顔で続行した

当院には耳鼻咽喉科があるが

常勤医師はいないので、週一度だけしか診療していない
その日は耳鼻咽喉科の診療日ではなかったので、昼休み、最近入手した 「今治 2014年版 」 の 「突難」 の項を調べた
だめもとで、 「処方例」 の通りに、発症一時間後にステロイドと、ビタミンB12を服用してみた
「突難」 の治療は、早ければ早いほど良いのだ

しかし

午後の診察時にも、診療が終って帰宅しても、一向に改善の気配はない
こんな時に飲酒してよいものかわからないが、やけ酒をのんだ

数時間たっただろうか

知らない間に炬燵で居眠りをして、暑くて目が覚めた
そして、いつものように、ラジオをつけて 「オールナイトニッポン」 を聞く

テンポのよい DJのトークと音楽に暫く聞き入っていた

すると気付いた

あれっ、右耳が聞こえる!

僕の 「突難」 は治ったらしいのだ

正直、ほっとした

神様、本当にありがとうございました

実は、突発性難聴ではなかったのかもしれない

単なる耳管狭窄だったのかも知れない

でも、今回は救われた

ステロイドが良かったのだろうか?

それとも、酒が良かったのだろうか?

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