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No.297 下腹部痛

2014/02/28

48歳女性 Yさん

1週間前から空咳が続くが、最近激しさを増した

2日前に受診しているが、検査の結果、マイコプラズマ抗体が陽性であったため、前医は、 「マイコプラズマ気管支炎による空咳」 と診断したのであろう

経口抗生剤と、鎮咳剤が処方されていた

翌日の夕方、 Yさんは、突然右下腹部の激痛に見舞われた

そして、とても耐え切れない痛みであったため、救急車を要請した

時間外当番である恒川信彦が診察すると

右下腹部に圧痛があり、筋性防衛もある

筋性防衛とは腹膜炎などのように、腹膜に炎症が及んでいるサインだ

女性の下腹部痛とくれば

卵巣腫瘍の頸捻転、子宮外妊娠、骨盤内腹膜炎など、男性にはない疾患も考慮する必要があり、一般の内科医の不得意とする症状の一つである

しかし、婦人科診療に慣れている恒川は 「どうも婦人科的疾患とは少し異なる」 と感じた

真っ先に考え付くのは虫垂炎

でも、何かが少し違う

「突然の発症」 は虫垂炎らしくないし、マックバーネーに限局した圧痛ではない

腹部単純写真では小腸の動きが悪いせいかガス像に少し異常がある

血色素は 13.8g/dlと正常だが、脈拍数は 112と速い

血圧は日頃 140前後の人だが、今は 90と低め

ショック?

ショックの原因は恐らく下腹部痛と関連するものだろう

とりあえず生食 (生理的食塩水) を全開で入れながら腹部エコーをおこなう
エコーが映し出したのは、骨盤内に広がる大きな腫瘤で、腹壁と繋がっているようにも見える

恒川信彦はこの時点で、ほぼ診断の察しがついた

ちょうどその時、後期研修医外科志望の佐伯航平が通りかかった

恒川は彼を引き留め

病歴と所見を手短に説明し、診断名を特定するように迫った
いきなりのことで、佐伯は答えに窮した

「造影 CTを撮りましょう」

これが、佐伯の答えだった

- つづく -

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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