前回の話
「造影 CTを撮りましょう」
これが、佐伯の答えだった
- 恒川 :
- そうだね、悪くない選択です
でも急がないと
造影CTでは右の骨盤内に大きな腫瘤が写し出されていた
しかし、造影効果はなく、出血が止まった血腫と推定できた
ショックは出血によるものだった
幸い、自然止血していたので、輸血のみにて患者は回復した
佐伯は聞いた
どこからの出血だったんでしょうか?
- 恒川 :
- これは、典型的な腹直筋鞘出血です
- 佐伯 :
- ふくちょくきんしょう?
佐伯はこの疾患を知らなかったようだ
- 恒川 :
- 腹直筋を栄養している動脈が破綻することで腹直筋鞘の中に出血します
出産とか、激しい筋肉運動などが原因となりやすいが、激しい咳も原因となることがあります
- 佐伯 :
- そういえば患者さんはマイコプラズマ感染による咳が続いていましたね
- 恒川 :
- 上腹部の腹直筋には前に腱画、後方に後鞘があり、スペースが限られているため、一般に上腹部の腹直筋血腫では広がることが少ないんですが、下腹部の腹直筋は後方に後鞘が存在しないため、出血が始まれば血腫はどんどん大きくなる傾向があり、今回のように、骨盤腔内にまで広がってしまうこともあり、軽視出来ないとされています
患者は次の日、鎮咳薬を処方されて元気に退院していった
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
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