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No.302 喘息 と 胃潰瘍 と 心不全 その1

2014/03/14

3者は関連がない

しかし共通点がある
それは、最近の 15から 20年の間に治療法が全く変わってしまったという点である
医学の発展は遅々としているが、時に、コペルニクス的発想から急展開する場合もあるのだ

まず今回は 「気管支喘息」 について

僕が研修医だった頃は

「気管支がアレルギー機序により攣縮する」 ことが原因と教えられた

気管支が 「攣縮」 (痙攣のように収縮すること) するのだから、治療としては気管支を拡張させる薬を使えば良いだろうということで、β刺激薬 (例えばメプチン) の内服や、キサンチン誘導体 (例えばテオロング) の内服や点滴が使われ続けた

そして発作時にはβ刺激薬の吸入スプレーを用いた

夜間外来では、ネブライザーを用いて気管支拡張薬を吸入している患者の姿をしばしば見かけたものである
すなわち喘息治療は、いわば対症療法のきわみであった

しかし、β刺激薬を使い続ければ

慣れの現象が生じ、使う薬の量も増え、喘息はますます慢性化、重篤化していく
薬が効かなくなって、喘息発作による窒息で病院にたどり着けずに死亡する人も少なくなかった
また、β刺激薬の吸入回数が多くなり過ぎて、小児が心不全により死亡する事件も起きた

現代、喘息の概念は一変した

「喘息は気管支の炎症」 という概念が定着したからだ
だから、炎症を抑える目的で 「吸入ステロイド」 (シムビコート、アドエアなど) を使うのが標準治療となった

吸入ステロイド剤は喘息初期から使うことはもちろん、喘息の前段階である 「咳喘息」 にも使う

因みに、咳喘息とは、他に原因のない空咳が 8週間以上も続く状態であり、喘息特有の呼気時の 「ひゅーひゅー音」 (喘鳴) はないが、放置すれば本物の気管支喘息になってしまう病態である

気管支喘息は、診断が早ければ

早期からの吸入ステロイド使用により発作から完全に開放される患者も多くなった
そして、重症の喘息患者や喘息死は激減した


吸入ステロイド製剤は昔から存在した

しかし、速効性がないことから、昔は治療のファーストラインとは誰も考えていなかった
むしろ 「効かない薬」 としての位置づけ、いわば日陰の存在に過ぎなかった

それが今では

喘息治療のスター選手になったとは、まことに皮肉な話である

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