ホーム > Dr.ブログ > No.314 共同執筆者

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

No.314 共同執筆者

2014/04/16

いわゆる 「スタップ細胞」 論文疑惑

筆頭著者 (トップオーサー) の小保方晴子さんだけが記者会見をしたことに違和感を感じた人は多いと思う
この論文の 「共同の」 著者として、トップオーサーの他に 7名が名を連ねている

7名はいずれも権威ある人たちなのだが、沈黙を守っている、もしくは論文に反論さえ唱えているのは筋が通らないと僕も思う

なぜ、このようなことが起きるのか?

一般論だが

学術雑誌に掲載される研究論文 (原著) には必ずと言ってよいほど共同執筆者名が記載されている
トップオーサーの他に少なくて 2から 3名、多い時は 5から 6名が記載されていることもある
これは論文に限ったことではなくて、学会発表でも、 「共同演者 (共同研究者) 」 は 5から 6名が普通である

論文や学会発表のウラ事情を知らない人なら

これらの共著者や共同研究者として名前が記載されている人たちが、本当に共同してその研究を行ったと思ってしまうかも知れない

しかし、事実はそうではない

大学医学部で、研究者のはしくれとして 17年間ほどをすごした僕の経験を述べる

論文初心者の頃は

研究の基本構想は自分よりもキャリアが上の人が出す場合が多い
しかし、自分の研究者としてのキャリアが上がるにつれて、研究のアウトラインは自分一人で考え、自分の立てた仮説の実証のために、いろいろ工夫を重ねて、実験を進める

研究の方向性や、具体的実験方法について 「共同研究者」 と議論を重ねるなどということはあまりない

他の研究者に知られたくない、いわば企業秘密に満ちた実験内容が多いから

実験や論文作成は、唯我独尊の世界である

実験を立案、実施するのは実質ひとり

もちろん実験手技の多くは、 「共著者」 には載らない 、「実験のプロ」 である実験助手に任せる場合も多い

小保方さんの場合も 「ユニット・リーダー」 という肩書はあるものの、実質一人でこの研究を行っていたのではないだろうか?

では、論文提出の時

実質的には共同して研究をおこなっていない人を、共同研究者として名を連ねるのか

それには 2つの意味がある

一つは、論文査読者 (編集者) に 「多くの研究者が共同で研究を行ったから信憑性が高い」 と思わせること
特に、共同研究者の名前の中に、世界的権威学者が含まれていれば、なおさら効果は絶大である

二つ目は、論文が採択された場合、共同執筆者は、その論文を 「自らの業績」 とすることができるからである
研究者としてのキャリヤアップに 「業績」 (=論文の数と質) は不可欠だから、誰でも自分の 「業績」 を増やしたい

論文を学術雑誌に投稿する際は

共著者全員のサインが必要であるが、論文の内容をろくに読みもしないで 「快く」 サインしてくれた研究者は、実際いくらでもいた

そろそろ、こんなシステムを変えるための工夫が必要である

一つの方法は、 「共同研究者」 の誰が、論文のどの箇所の記述に関与したのかを明確に示すことだろう

 |