ホーム > Dr.ブログ > No.318 「論文」 は信じられるか?

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

No.318 「論文」 は信じられるか?

2014/05/07

論文にもいろいろな分野があるので、
ここは医学論文、中でも臨床論文に限って考えて見る

医学論文は、ざっくり分けて実験を基にしたものと、観察を基にしたものとがある
後者がいわゆる 「臨床論文」 である

たとえば 「野菜を食べることが体に良い」 というたぐいの論文

「野菜を多く食べる人は、あまり食べない人に比べて癌になる率が低い」

みたいな論文は、山ほどある

この類の論文では

結果を導き出すために、さまざまな手法が用いられるが、一般には実験を行っていない 「断面研究」 だ

観察の対象となった人や、その人の野菜の摂り方に関して、世界各地で全く同じ状態を再現することなど不可能だ
いわゆる 「追試」 ができない

すなわち、結論が本当か嘘か、著者以外にはわからない(著者もわからない?)

言葉は悪いが 「言った者勝ち」 の世界だ
論文を信じた人の誰にも害がおよばないこの種の論文は、野放しでも一向に構わないのかもしれない
むしろ野菜農家は喜ぶだろう

極論すれば、聞き取り調査など一切しなくたって

「結論先にありき」 であれば、一晩で論文を捏造することだって可能である
こんな捏造論文でも、論文の構成さえしっかりしていれば、世界の一流医学雑誌の編集者さえもこれを見破れない

もう少し進めて

「ある(新)薬がどの程度効くのかを検証した論文」 というものがある

「降圧薬Dの、降圧以外にも優れた効果が実証された」 とする 3大学の絡んだ臨床論文が

一流雑誌に掲載されたが、結論を導き出す肝腎のデーターの改ざんがあったとして、社会問題となった事件は記憶に新しい

しかし、穿うがった見方をすれば

臨床論文の何十パーセントかは、ともすれば、こんな風に作られて、雑誌に堂々と掲載されているのかも知れない

少しでも研究生活に身を投じた経験のある医者なら

こんなことは百も承知のはずで、 「センセーショナルな論文」 を、苦笑いしながら読んでいることだろう

 |