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No.320 病名の呼称変更

2014/05/13

以前、 「痴呆(症)」 と呼ばれていた

今は 「認知症」

ちなみに英語では今も昔も dementia
メンタル ・ 知的機能に障害があるという意味だろう

よく似た例に

かつて、 「精神分裂病」 と呼ばれていた疾患がある

今は 「統合失調症」

さて 「認知症」 は、疾患名として不適切であると僕は思う

名が体を表していないからだ

なぜなら

いわゆる 「認知症」 は症候群であり、次の異なる疾患の総称であること

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体病
  • FTLD (前頭側頭葉変性症)
  • 脳血管性認知症

さらに、 「認知(機能)」 は

健康人が誰でも持ち備えている知的能力であり、これを、まんま、疾患名にすること自体が理論的でないこと

例えて言うなら

高血圧症のことを 「血圧症」 と呼ぶようなものである

高尿酸血症のことを 「尿酸症」 と呼ぶようなものである

下垂体前葉機能低下症のことを 「下垂体症」 と呼ぶようなものである

ではどう改名するべきだったか

僕は

「認知機能不全症候群」 あるいは、 「認知機能障害症候群」 が正しいと思う

これが長過ぎる、と言うならば

単に 「デメンチア」 と、英語をカナにすれば良い

外来語の病名をそのまま日本語にしている例はいくつもある
アレルギーしかり、アナフィラキシーショックしかり、エイズしかり

現場ではすでに

「認知症」 でなく 「認知」 と言っている場面が多いことに驚く

たとえば

「あの患者さん、認知があるから ・ ・ ・ 」

など、ナースステーションでは、よく耳にするフレーズだ

これを聞いていると、僕は

「誰だって多かれ少なかれ認知機能はあるだろう」
と、つい、ツッコミを入れたくもなる

口にするたびに、いつも違和感を感じる、 「認知症」 の呼称

早く変更していただきたいものである

余談

「糖尿病」 のことを、 「高血糖症」 など、その他いろいろな疾患名に変更しようとする動きがあると聞く

「痴呆症」 には差別的、侮蔑的な響きがあるから、疾患名を変更することは理解できる

しかるに、今まで使い続けてきた 「糖尿病」 という名称を変更しなければならない理由はどこにもない
と、僕は思うのだが・・・

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