2014/05/29
今日は午前 33名、午後 21名の予約患者が入っている
比較的少ない数で、西澤は、少しだが、ほっとした
初診患者の何人かが回ってくることを覚悟しなくてはならない
はじめの数名は高血圧や糖尿病の患者で、定期処方だけで終った
もちろん次回予約、次回の採血予約も入力するが、そこは手馴れたもの
ちゃんと聴診もして、患者と笑顔で会話をかわし、スムースに診療を終えることができた
ここまでで 15分
さい先の良いスタートと言って良かった
患者を待たせることもなく、ほぼ予約時刻どおりの診療が続いた
案の定、新患が回ってきた
腹痛や下痢はなく、頭痛や発熱もない
血圧は 96/ 67と、やや低いが、若い女性なら、正常でもありうる程度である
ただ、脈拍が 102と、やや速いのが気になった
腸閉塞、急性期の胃潰瘍、脳圧亢進、髄膜炎、脳炎、脳血管障害、心筋梗塞、急性肝炎など、数え上げたらきりがない
おっと、若い女性であるから、妊娠による 「つわり」 も想定内だ
つい最近の職場健診では、検査項目はすべて正常範囲内だったとのこと
「嘔吐は今まで経験のないほど激しくて頻回」 であり、
「昨日の夜までは何ともなかった」
と言った
ベッドに寝かせて腹部を診察するのだが、診察に充分なポジションすら取れなかったため、圧痛など正確に所見を取ることが不可能であった
とにかく早く検査をして診断をつけて治療をしなければならない
血液検査 (消化器スクリーニングセット) と、尿の HCG、それに腹部単純写真 (腹単) をオーダーして、制吐薬を加えた 500mlのソリタ T1を点滴した
血液検査では白血球数が 9600とやや増加している以外に特に異常はなく、 CRPも 0.2と正常範囲内であった
「血液検査に異常が出ていないということは胃病変の可能性が高い」
「胃潰瘍か AGMLだろう」
と判断した西澤は、点滴も終了しかけている患者に説明した
「明日、胃カメラをしましょう」
西澤は彼女に制吐薬と PPI (胃薬) とを処方した
彼女は 「いいえ、帰れます」 といって、母親の運転する車で帰っていった
その夜、大変なことが起きることなど、予想だにしないで
- つづく -
※ この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありませが、医学的記述に関しては間違っていないはずです