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No.340 映画化

2014/08/26

昨年末に公開され、大ヒットとなった日本映画「永遠の0 (ゼロ)

僕は、忙しさにまぎれて鑑賞の機会を逸していた
ところが、先日、H安堂に行った際、発売されたばかりの、 DVD化された 「永遠の0」 をみつけたので、早速手に入れた

ブルーレイ版の画質は極めて良く

自室で鑑賞する時間はとても楽しかった
静止画像にしたり、少し前に戻って見ることができるのは DVDならではの利点である

しかし、いかんせん、劇場で見るのとはスケール感が異なる

劇場で鑑賞できれば、別物に見えたかも知れないと思うと、少々残念だった

僕は、すでに原作を文庫本で読んでいたから、ストーリーは知っていた

原作は、著者である百田尚樹氏の綿密な取材にもとづくリアリティーの高い戦史と、主人公である宮部久蔵という兵士の、緻密に描き込まれた虚構の人物像、そして、意外な結末で幕を閉じるラストと、息をもつかせぬ展開で、読みごたえのある作品であった

しかし、文庫本で数百ページにも及ぶこの作品を

2時間と少しの映像にまとめるのには、どだい無理がある
脚本家や監督は随分苦労したことだろう

当然、原作の多くの部分が省略されているが、映像として映える部分、たとえば空中戦などは最新の CG技法により見事に具現されている

DVDを見終えての素直な感想は、一種の物足りなさであった

原作を活字で読むと、想像力がかき立てられる
想像は、自分の好きなように広がってゆくのだが、映像ではそれが固定化されてしまう不満

あれも描かれていない、これも省略されている、という不満
結局、原作のあらすじだけを、派手なシーンを中心に描いたに過ぎないようにも思われた

しかし、これは何も永遠の0に限ったことではなく

一般に長編小説を映画化する際のジレンマだろうと思う

昔、 「忍ぶ川」 という映画をみたことがある

ベースは三浦哲郎の短編小説で芥川賞受賞作であるが、熊井啓監督の感性による、当時、すでにめずらしくなっていたモノクローム、スタンダード版の映像は、原作を超えた美しさを表現していた記憶がある

長編小説は映像化に不向きだ

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