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No.388 文化とビジネス、ついでに成長戦略

2015/06/26

現代は音楽を切り売りする時代である

人々は気に入った曲を ピックアップして、ダウンロードにより聴く
ダウンロードされた音楽は、しばらくすると気分で消される

音楽は、使い捨ての週刊誌みたいな存在になってしまったのか?

それとも巷に溢れる音楽が多すぎて、またクオリティーが低くて CDを購入する気持ちが起こらないのだろうか?

いや、そんなことはないはず、と信じたい

アイポッドや スマホが普及したことによる当然の帰結、それも一過性の現象であると信じたい

とはいっても CDの売り上げ枚数が右肩下がりに年々減少を続けていて、 CDショップも閉店するところが相次いでいる現実がある
かつては ミリオンセラーや ダブル、 トリプルミリオンがあった
今では ミリオンセラーですら、ほとんど影を消した

CDを個人が購入して保有していれば、いつかまた聴くことができるが

いったん消去してしまえば、その音楽は記憶の彼方へと遠ざかり、結局忘れ去られていく運命を辿る

CDを自分で保有していれば、今流行の音楽をずっとあとになって聴くこともでき、その当時、自分の周囲に起きていた いろいろなことが思い出されて、音楽とは違う意味でも懐かしいものである

いっぽう

クラシック音楽や ジャズの愛好家は一般的に今でも CDを買うが、これらの購買者数は少なく、したがって ポップスに比べて圧倒的に製造枚数が少ないから製造販売側の利益は少ないので、新譜を出すのに ジレンマを抱えていることは事実だろう

因みに、 ジャズや クラシックは新譜で 3000枚も売れれば大ヒットだという
そのせいで普通の規模の CDショップでは ジャズ ・ クラシックコーナーは隅に追いやられ、陳列されているものは ほんの一握りのタイトルに過ぎないのは誠に残念なことである

製作者側が効率だけを重視するのであれば

クラシックや ジャズの CDのほうこそ、製作コストや 流通コストが抑えられる配信専用に変更したいところだろう
しかし、これらの リスナーは ポップスとは違い、高音質の再生機器を用い リスニングルームで、再生音楽として、繰り返して聴くのであり、 CDを保有することこそが重要な要素であるから、ポップスとは一線を画する

少々横道にそれるが、僕は、竹内まりやの声質が好きで、原音に近い状態で聴きたいから、 CDを買う
そして、その歌声を、かすかな息遣いまで鮮明に再現する機器を選択することに、いつも腐心している


歴史を辿れば

レコードの発明により演奏を記録することが可能となってから、音楽は庶民のものとして広まった
そして音楽は文化となった
文化は、何らかの形で記録が残らないと継承されない

その 「記録」 が曖昧になってきている

現在は製作会社には マスターテープが保存されていると信じたいが、これから先、すべての音楽が サーバーの中に デジタル信号としてだけ保存されていくのかも知れないと思うと寂しい限りだ

さて、今は 「文化」 がビジネスに直結している時代である

秋葉原から発信された サブカルチャーが

音楽、 映画、 コスプレ、 メイドカフェとなって世界に拡散する
コスプレの イベントでは 世界各地から マニアが集結する

コミックスや アニメーションの技術も、常に日本が世界をリードしてきた

そして素晴らしい作品を次々と世に送り出し、世界に発信する
これらは日本独特の文化といってもよいのだが、実は巧妙に仕掛けられたビジネスであり、これが日本のお家芸となりつつある

まさに ニッチな文化を ビジネスに変えたと言ってよいのではないか
これは立派な 「成長戦略」 である


我々は A氏の唱える 「成長戦略」 という漠然とした、呪文のような タームに惑わされてはいけない

A氏の頭の中には、さぞいろいろな 「成長戦略」 があるのだろう
「戦略があまりに多いのは、戦略がなきに等しい」

と言う人がいるが ・ ・ ・

あまたの 「成長戦略」 が本当に正しいのであれば

頭で描くだけでなく、即実行することに意義がある
しかしながら、 「成長戦略」 などというものは、計画から実行に移し、その成果が出るまでには随分時間がかかるものであり、その間に政権が変わってしまうこともありうる

A氏は、そんなことはきっと百も承知の上で、聞こえの良い 「第 3の矢」 などという言葉を、いかにも実効性のある政策のように声高に叫ぶ

しかるに、何のことはない

今政府が考えている 「成長戦略」 とは外貨を稼ぐことではなく、マイナンバー制度の導入による国民のプライバシーという ビッグデーターの一元的管理を目玉としている

手っ取り早く プライマリーバランスを正常化する確実な方法は、やはり増税と社会保障費の圧縮であり、その第一歩が マイナンバー制度導入であることに間違いはない

「成長戦略」 が何であれ

この先数十年、国民の金銭的負担はます増大するであろうことは誰もが感じている


前述したような

民間発の 「本当の成長戦略」 が早く効を奏することを願いつつ、僕は、疲れたからもう寝ることにする

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