2015/07/10
との報道が 6月にあったことをご記憶の方も多いだろう
少し前から政府の規制改革会議内の健康 ・ 医療ワーキンググループで検討されていた
そして、今年 3月に 「外用消炎鎮痛薬 (=湿布) の一部を健康保険適用からはずし、保険適用となる湿布剤に対しても処方量の上限を定める」 、という提言がなされていた
今年 6月、規制緩和策答申に盛り込まれたこの提言の検討に入ったため、湿布の保険はずしと処方制限が一気に現実味を帯びてきた
これを受け、湿布メーカーの大手である久光製薬の株価が急落した
「 2020年までに、わが国の 基礎的財政収支 (プライマリーバランス : 以下 PB) を正常化する」 との意気込みを示した
国債関連を除いた、国の歳入と歳出の バランスのことをさし、平たく言えば、歳入とは税収、歳出とは 社会補償費 +地方交付税 +公共事業費 +防衛費などである
国債関連を除いた歳入 59兆 5千億円に対して 歳出は 72兆 9千億円だから、 PBは 13兆 4千億円の マイナスということになる
この 13兆 4千億円を 0にするには 「税収アップ」 and/or 「歳出削減」 しかない
国民生活に重大な意義を持ち、かつ歳出の大きな部分を占める社会保障費を削減して、その結果 PBが 0となったとしても、国民は不幸になるだけである
それならば税収をアップするほうが良いのか?
規制緩和による非正規雇用が拡大するなどして 国民の実質賃金が 25ヶ月連続で マイナスとなっている現状、また、政府のインフレ誘導による物価上昇が進む現状の中では、追い討ちをかけるようにして家計を苦しめるだけであろう
ある報道機関の直近の アンケート調査では 「生活がかなり苦しい」 と回答した人が国民の 36%だった
しかし、円安により輸出関連で収益を拡大する企業があっても、富の分配には動かず節税対策としての設備投資などが増えるだけであったりすれば、また政府が法人税率の引き下げに動いている中では、仮に国内に流通する現金が増えたとしても、法人税収による歳入増加にはつながらない
下げ止まらない円安で収益の悪化する輸入関連の企業だって多い
第三の矢、 「民間投資を喚起する成長戦略」 が成功したとしても、同じ理由で、歳入は、暫くのあいだ著増することはないであろう
PBを急いで 0にする必要がどこにあるのかなと考えてしまう
国民生活が豊かになれば、自然に PBの均衡が取れるのではないか
つまり、はじめに PBの零化ありきではなく、国民生活にゆとりができた結果として PB= 0がついて来るではないか
政府はとりあえず歳出削減から手をつけるつもりらしいが、歳出削減となればいつも槍玉に上がるのが医療費である
医療費は、年々増加を続けるから、これを削ることが最も手っ取り早いというわけだ
と、あたかも日本だけの異常事態のごとく言われ続けている
しかし待てよ
惑わされてはいけない
医療技術の高度化、先進医療の導入にともなって医療費が年々増加するのは必然である
米国をトップに、日本は 10位 (対GDP比) 、 15位 (一人当たり医療費) という低さである
ちなみに 上位 7ヵ国 (神セブン) は、米国、 オランダ、 フランス、 スイス、 ドイツ、 オーストリア、 デンマークである
また フリーアクセス (自由に受診先を選べる) で国民平等に高度な医療サービスの提供を受けられるのも 我が国の制度の特長である
「医療費」 とは、医療にかかったすべての金額をさしているのであって、政府が支出する額ではないというところだ
ここから個人が納める保険料や企業の保険料負担分や、医療サービスを受けた場合の個人の自己負担分を除くと、国庫負担はたったの(?)16兆円である
政府はさらに漢方薬を含んだ多くの薬を保険からはずし、 OTC薬 (over the counter=処方箋なしでドラッグストアで買う薬) 化することをもくろんでいる
確かに日本の薬価は世界に比べて高い
そして、儲かっているのは製薬メーカーや薬品販売会社である
だったら薬の価格を下げさせればいいだけの話ではないか
むしろ、多少評価さえしている
実際、 「薬局で買うと高いから」 との理由だけで湿布の処方を希望される患者さんもいるし、 「医師には内緒で家族の分まで湿布を処方してもらう人がいる」 とか 「病院で処方された湿布を他者に上げたり、譲渡している人がいる」 、という噂も聞くからだ
処方される側の モラルが問われるとは情けない限りである
迷惑するのは本当に湿布剤を必要としている患者さんだ
しかし、湿布問題に端を発して、次々と医療の保険はずし、フリーアクセス制限、自己負担額のアップなどが現実化するのではないか、と僕は危惧する
国民は不幸になるだけであることを忘れないでもらいたい