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No.407 性格と人格

2015/10/19

あるとき、ふと思った

この 2つは どう違うのだろうかと

そこで、いろいろ調べて見ると

この 2つは 似て非なるものであることがわかった

日本では

character を 「性格」 、 personality を 「人格」 と訳すが、欧米では これらの区別はあまり明確ではないらしい
キャラクターを 「性格」 、 パーソナリティーを 「人格」 と訳したところに、そもそもの間違いがあるという説さえある


性格について

血液型占いは 一体誰が考え出したものか知らないが、人の性格と 血液型との関係は否定されているとは言え、

  • A型の人は 几帳面で ・ ・ ・
  • B型の人は 適当で ・ ・ ・
  • AB型の人は ユニークで ・ ・ ・
  • O型の人は 親分肌で ・ ・ ・

などというのは、血液型を抜きにしても、性格の れっきとした分類に他ならない

性格は 本当に多種多様である

  • 根っから明るく、他者と盛り上がるのが好きな人と、孤独を好む人
  • 慎重で、物事をすぐには決められない優柔不断の人と、即断即決の人
  • 疑い深く、人を信用しない人と、誰でも信用する人
  • 目立ちたがり屋と、目立つことが嫌いな人
  • あきらめが早い人と、いつまでも くよくよ後悔する人

などなど、数え上げたらきりがない

さて、このような 「性格」 は 生来決まっているのか、環境によって作られるのか という点を考えてみる

同じ親から生まれ、同じような環境で育った兄弟姉妹でも、性格は さまざまである
これは 「環境が 性格を形作るわけではない」 という 最大の証拠である
同朋といえども 各人の遺伝子は異なっているので 当然といえば当然である
すなわち、性格は 持って生まれたものであり、一生変わらない
性格 = character の語源は、彫刻に由来する言葉であり、彫像のように変わらないことを意味する
そして、性格というものは、多分に個的なものである


パーソナリティーについて

性格が 個的であるのに対して、パーソナリティーは 多分に社会を意識したものである

仮面劇の仮面を意味する 「ペルソナ」 に語源を有する パーソナリティーは

仮面をかぶって演技する俳優と同じく、仮面を脱ぐと 別のパーソナリティーになる場合がある

したがって、パーソナリティーとは

生来持って生まれてくるものではなくて、ヒトが成長する過程で 社会生活が円滑になるように、自然に身につけた、あるいは意識して身につけた、場面場面の智恵である
すなわち、パーソナリティーとは 演技そのものである
自分に与えられた役柄を 演じているのである

経営者・実業家のことを ビジネスマンと呼んでいたが、女性経営者が増えたことにより 「 ビジネスパーソン」 と呼ばれるようになった

すまわち、 ビジネスという役割を与えられた人だから、ビジネスパーソンなのである

いわゆる 二重人格、あるいは 多重人格が存在するのは、このように考えると 別に不自然なことではない

誰でも、職場での顔 (職場での人格) と、家庭での顔 (素の人格) は 多分異なる
多かれ少なかれ、誰だって多重人格といってもよいくらいだ

「理想の人格の人と思って結婚しても、家族となってしまうと、恋愛時代とは全く違った面をいくつも発見し、互いに幻滅する」 などということも日常茶飯事である
すなわち 「人格」 は、その人固有のものではなく、場面によって使い分ける性質のものなのである
だから、いわゆる 「人格者」 などというものは、きっと 世の中に存在しない

ラジオなどには 「パーソナリティー」 という仕事がある

これは、番組を進行する役割をもった人のことで、彼らは番組で 「演技」 をしているわけである

「おばかキャラ」 とか、 「天然キャラ」 など

今では普通に使っているが、上述の理屈では、これは正しい使い方ではない
おばかを演じているのだから、正しくは 「おばかパーソナリティー」 のはずである
本当のおばかなら、テレビの バラエティー番組で、場の空気を読んで視聴者の笑いを取る発言など、できるはずがないし、視聴者も それが演技であることをわかった上で楽しんでいるのである


パーソナリティーとは 演じる役割や行動様式のことであるが、社会に受け入れがたい 演じ方や 行動様式をとる人がいる

これらの人々に、周囲の人は手を焼く
いわゆる ○○クレーマーなども、それに該当するかも知れない

極端な場合は 「 パーソナリティー障害」 という、れっきとした疾患となる
(昔は 「人格障害」 と呼ばれていたが、名称変更になった)


さて、 「境界型(性)パーソナリティー障害」 という 疾患群がある

これは 他者に対する評価が、些細なできごとによって、ごく短時間で 正反対に変化する特徴をもつ
たとえば、ある人に対して、朝は 賞賛や尊敬の念を抱いていたにもかかわらず、何かのきっかけにより、夜には 憎悪の感情を抱くように変化する
僕は、十数年前、このような患者さんの主治医だったことがあり、大変怖い思いをした日々のことを、今でも覚えている

唐突だが、これでおしまい

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