ホーム > 川口正展のなるほどザ・メディスン > chap.032 脳脊髄液減少症
2016/12/14
ここでは 脳脊髄液が何らかの原因により漏れ出し減少することによって引き起こされる頭痛について紹介します
すなわち、立位や 坐位で 3時間以内に頭痛が起き、 15~ 30分も横たわると頭痛はおさまります
頭痛以外の症状として 頚部痛、 めまい、 耳鳴り、 視機能障害、 倦怠感など、さまざまな症状を伴うこともあります
誤診病名は、 「偏頭痛」、 「髄膜炎」、 「慢性頭痛」、 「頚椎症」、 「うつ病」、 「疲労症候群」、 「心因性頭痛」などと、これも多彩で、症状が改善しないため、患者は いくつもの医療機関を転々とすることもあります
登校拒否児童には 本症の人が含まれているとも言われます
脳の表面を満たし、さらに脊柱管にも充満していて、真ん中を通る脊髄を髄液に浮遊した状態に保ち、いわば、脳や 脊髄を 衝撃から保護する役割を担っています
ここで何らかの原因により 脳脊髄液が減少すると、立位では 脳が下方に下がるため、脳表の血管や硬膜と脳の間の血管が引っ張られるようになり、頭痛を生じます
髄液圧が下がることが原因です
現在は 「脳脊髄液減少症」 という名前に統一されました
75%が女性ですが、女性に多い理由は不明です
髄液は硬膜に囲まれていて、硬膜からは幾つかの神経が出る穴が開いているので、この孔が広がると髄液が漏れる可能性があります
また 激しい上肢の動きをともなうスポーツ (テニス、 バドミントン、 スカッシュなど) が 原因と考えられる例もあります
腰椎穿刺での髄液圧測定は 一定の傾向がなく、正常圧であっても否定はできません
頭部の ガドリニウムによる 造影MRIをおこなうと、硬膜が強く造影されるのがこの症候群の特徴とされています
また 脳脊髄液減少症でない疾患 (悪性腫瘍の硬膜浸潤、結核などによる肥厚性硬膜炎) でも 硬膜の造影効果が出る場合があることから、造影MRI検査は 感度も特異度も、さほど高いとは言えません
教科書的には 「髄液の漏れている箇所を調べ、その部位に自家血 (自分の血液) を注入すること (硬膜外自家血注入 ; ブラッドパッチ) 」 と 書いてあり 実際この治療法は 2016年に保険適用となりました
2週間程度入院していただいて、安静臥床 (= 重力圧を回避する) と、十分な水分摂取 もしくは 点滴をするだけで、硬膜の孔が自然閉鎖して治癒する場合も多いといわれています
発症 6ヶ月以内であれば 自然閉鎖が期待されるともいわれます
2年に 1例ほどは この疾患に遭遇しますが、上記の治療だけで全員が治癒しています